電気女と鬱念(うつねん)男


 1時間がたち、東京駅に着いた僕は、人混みをかき分け噴水公園を目指した。家にホームステイする人は既について待っているのだろうとは思いつつも、僕は予定通りに着くように歩いて行った。


 手を噴水に向かって伸ばす僕と同じくらいの女の子がそこにはいた。「すみません。星野ですが、メルさんですか?」ゆっくり丁寧を心がけて話した。「はいそうです!星野 ツカサさんですよね?不束者ではありますが、どうか宜しくお願い致します。」予想もしていなかった返答に僕は唖然としてしまった。ぼーっとしている間に「大丈夫ですか?」と言われ、ふと我に返った。彼女の顔がかなり近くに来ていて不覚にもドキッとしてしまった。顔に出さないように我慢しながら「ではいきますか。」と言った。「えっ、あ、はい!」彼女に悟られただろうか。


 電車の中では彼女は懸命に会話を繋ごうとしてくれたが大した会話もないままに、家に着いてしまった。


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